超世界転生エグゾドライブ深海考察

カクヨム産小説「超世界転生エグゾドライブ」について思いつく限りいろいろ書いていくやつ。

チートについて ドライブリンカーについて

チート(cheat)とは騙す、欺くこと。 コンピュータゲームにおいて、広義には制作者が意図しない方法や結果により使用者が意図的に公平性を損なわせる行為のこと。 狭義には、コンピュータゲームにおいて優位に進めるための(バグ等を用いた)不正行為またはハッキング行為のこと by wikipedia

 

異世界転生におけるチートは広義のほうに由来します。

その異世界が本来持たない法則や能力を持つことで原住民族に不可能な行為を可能とすること、それが異世界転生におけるチートです。前世の技能だとか記憶をそれとするパターンや転生時に何か後付けでつけられたパターンなど様々ですが、ほとんどの作品にこういった要素はあるものでしょう。突出した何かがあるからこそ主人公は主人公たりえているのですから。

異世界転生ものもバリエーションが増え年々過激になっており最近はなんというか呼吸をしているだけで強くなるものもあるだとか。恐ろしい業界だ……。

 

さておき、そういった異世界転生を題材に取り扱ったエグゾドライブにはもちろんチートに該当するものが存在します。それが「チートメモリ」。

これはエグゾドライブプレイ時にドライブリンカーに最大4つまで装備することで、異世界転生に伴い生来のものとして付加することのできる能力を込められたものですね。何種類も開発されておりそれらの組み合わせにより様々な異世界転生が可能となり、転生者同士の戦術と駆け引きとなるわけですね。

効果はバリエーション豊か、異世界転生ものでよく見るようなものから、は?なにそれ?どういうこと?というものまで様々です。

まあ実際の効果とかはそれぞれ話していこうと思います。

 

さて名前を出したのでドライブリンカーについても話しておきましょう。

これは異世界転生を行うにあたって必須の装備でありチートメモリを装填するいわばデュエルディスク的な奴です。このドライブリンカーこそが異世界転生技術の根幹といってもいいでしょう。これを装備していることで2tトラックによる衝撃は異世界転生するためのエネルギーに変換され(実は毎回死んでるわけではないらしいです)、チートメモリは基本的な挙動で管理され、IPの算出まで行っています。

公式であるWRA以外が販売してるものは存在せず、独自開発しようとしても全く解析できず、ドライブリンカーの改造など行っても異世界転生が失敗し普通に轢殺される……この作品最大のオーパーツですね。一体何なんでしょうか。

ドライブリンカーにはチートメモリが装填できるスロットが4つあり、レギュレーション次第ですが基本的には3つがオープンスロット、1つがシークレットスロットとなります。シークレットは転生者の任意のタイミングまで対戦相手にも観戦者にも開示されないスロットになるので切り札といえるものが採用されますね。これはシンプルに競技性娯楽性を上げるいい要素だと思います。無類のチートも4種と制限されれば万能とはいかないもの。そこに読みや駆け引きが加わることでより楽しい異世界転生になるわけですね。

 

皆さんも正規のレギュレーションにしたがってレッツ異世界転生。

IP(イニシアチブポイント)について

先の記事でなぜエグゾドライブが競技化されたか、を語ったが、じゃあ実際にどのようなルールとするか問題になりますね。

目的を考えると滅亡の解決RTAでもいいだろうけどそれだけでは娯楽として競技として物足りない。

そこで出てくるのがこれ、IP、イニシアチブポイント。滅亡解決をゴールとして、IPの大小で勝敗を分けるというルールになっているわけですね。

このIPというもの、基本的には滅亡解決時に多く得られる一方、それ以外の手段も豊富なので単純な速さ比べではなく、より多くIPを稼ぎ、あるいは相手のIP獲得手段を削る戦略がここに成立すると。さらにIPは多いほど転生者は成長しやすくなるため、IPを稼ぐ行動は速度面でも重要であり、そこのバランスが競技性をさらに複雑にしています。

 

では実際IPとはどういうときに獲得するか。

それは「優位であることを異世界に認識させること」。もっと端的にいってしまうと「現地住人に活躍を見せつけること」です。

例えば悪漢をぶっ飛ばした時。悪漢や周囲の住民から見たら転生者はより強い存在であり、周囲の住民から見たら精神面からも優良な人である印象を持つことになる。

例えば王族に認められ重用されている時。王族からすれば重用するだけの優位性を認めており、周囲からも相応の認識で見られることになる。

こういった現地住人に認められる行動をとった場合にIPは得られます。

これは結果的に異世界を良い方向に向けるため滅亡解決の方向性とも合致し、競技化に当たって非常に有用なルールといえるでしょう。

 

 

さて一方でメタ視点で見た時。

このIPによる勝敗の決定は非常に重要な意味を持ちます。

題材的異世界転生の「あるある」を作品内競技での「定石」に変換する役割です。

主人公が劣悪な環境で働かされる奴隷を見捨てられず救い出してしまう。

主人公が悪漢に絡まれついついぶっ飛ばしてしまう。

主人公が各地を旅したりしてトラブルに巻き込まれていきつつそれを解決する。

そのほかそのほか、まあ見おぼえもありバリエーション豊かな異世界転生のあるあるイベント、本来はその作品ごとのキャラクター性に基づいた理由とかがあったりするわけですが、1試合で2転生が行われるエグゾドライブではほぼIP由来の理屈につながります。

劣悪な環境で働かされる奴隷を救うのは、その奴隷とその主人に対して劣悪な環境や奴隷として苦しむものを見捨てられない慈悲とそれを解決する手腕を見せつけるため。

悪漢に絡まれついついぶっ飛ばしてしまう、などは単純な力量の見せつけですがこれを有効に行うため悪漢の多そうなところにわざわざ行く(ガラの悪そうな冒険者ギルドなどですね)といったことは基本中の基本。

各地を旅してトラブルに巻き込まれて解決すれば、上記のような活躍を各地のあまり自分を知らない人に見せつけられます。単純に数もそうですが、やはりスゲーと思ってる人がスゲーことするのと、何も知らない人がスゲーことするのではギャップがありますからね。

ヒロインもとい現地住民の美少女などもIPの源泉ですね。やはり美少女相手だと嫉妬にしろ同情にしろ周囲の目が違うので。そもそも美少女を連れ歩くなども優位性でしょうか。

 

 

まとめるとIPとは題材的異世界転生の「あるある」を作品内競技で必要な行動に変換しつつ競技性を維持する設定の根幹となる存在なわけですね。

ざっくり「エンターテイメントな活躍すると得られるポイント」だと思っていただいてもいいと思いますけどね。

エグゾドライブは設定の端々が説得力と整合性と柔軟性を兼ね備えてるから怖い。

エグゾドライブとは

異世界転生エグゾドライブ!

それは『人生』を賭けた熱き戦いであるーーー

 

エグゾドライブ。

それはこの作品のタイトルそのものであり、同時に作品内で普及している「娯楽」の名前である。

ホビーアニメとしての「遊戯王(DM以降)」や「カードファイト!ヴァンガード」、「バトルスピリッツ」などをイメージしてもらえるとわかりやすいのではないでしょうか。

作品内の特定の「娯楽」にかかわる少年少女の熱き物語、友情、恋愛、家族愛、絶望、希望……「え、おもちゃでなんでそんなことが起きるの?」と言わんばかりの壮大なストーリーが発生することも多いこのジャンル、人生というか人命を賭けることも多いが、この作品においては『人生』を賭けるのは文字通りの意味になります。

 

あらためて、作品内の娯楽としての「エグゾドライブ」について。

端的にいうと、「娯楽化され競技化された異世界転生」です。

……うーん何言ってるかわかんねー。分解して説明します。

 

まずは一般的な、小説等の題材にされる視点からみた「異世界転生」について。

自分の今生きている場所以外から何かしらの理由で異世界に転移し何かしらの目的に沿って活動し、活躍する作品の題材のこと。

最近でこそネット小説から「現代日本から中世ヨーロッパ風世界に転移し元々の知識で活躍するもの」とも言えるが、そこまで尖っていなくても、異世界には何かしらの解決点がありそれを(時には結果的に)解決する流れは昔からあると思われる。自分の幼少期の記憶にもある「ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド」とかも該当する。ジャンルの幅も増え、解決自体が目的ではない場合も多くなってきたが、結果的に解決していること、またそれにより評価が徐々に(あるいはすさまじい速度で)あがっていくことは概ね変わらないのではないだろうか。

 

一方でこの作品内における「異世界転生」について。

まずこの作品内世界から観測された異世界は全て滅びの危機に瀕している。それも一つ二つではなく無数の異世界が。

純粋な外敵、上位者による暴力、資源の枯渇、ディストピア化……形はいろいろとあるがそれらは間違いなくその異世界をやせ細らせる原因であり、そして観測された異世界は全てそれらを内包していた。なぜかは判明していない。作品内世界がたまたま非常に幸運なのか、何かしら条件があるのか?わかっているのは異世界に干渉し必要に応じて滅びの危機を解決して何かしらの利益を得ることができる、未曽有の可能性の存在である。

かくして異世界への干渉手段としての転生が開発された。

 

  • 娯楽化とは

さて、滅びかけた異世界に利益の厳選があることは確か。ではどのような形でそれを受けるか。

作品内世界が出した結論こそが娯楽化となる。

異世界からの帰還はできるが物を持ち帰ることはできない。

向こうからの干渉はできないため上記も含めて政治的関係性は利益としづらい。

前提条件から想定される利益はあまりに現実としづらかった。しかし異世界というロマンを手放すにはあまりに惜しい。

娯楽は利益を生み出す。その娯楽が一般的、熱狂的であればあるほど関連する事業をもとに金という名の国の血液は循環し、市場は活性化する。これは実際のスポーツやアイドルを見ても事実といえる。

そして娯楽として一般的に普及することで数多くの人々が異世界転生を行うことができ、行うモチベーションを持ち、数多の異世界を救い、その様がさらに多くの人を異世界転生へと導く。通常対応しきれない無数の滅亡への回答ともなっている。

異世界転生の娯楽化は、観測された異世界に対する対応として非常に有用な手段として確立されたと考えらる。

 

  • 競技化とは

この場合異世界転生は「その世界を滅亡から救う」という明確な目的がある。つまり、「その世界を自由に生きて楽しむ」といったような行動を主目的にならないようにしなければならない。それも娯楽性も維持しつつ。

そのための手法は何か。ルールを定め、勝敗を決める競技とすることである。多くのスポーツがそうであるようにルールをもとに勝敗を決することは娯楽となる。本来の目的をそのルールに組み込めばその両立は容易だろう。

 

 

まとめると、作品内世界としてはある意味必然として異世界転生は娯楽化、競技化された。その異世界転生の目的は常にその異世界の問題の解決であり、その内容はメタ視点で見た時の題材的異世界転生と一致する。

つまり題材的異世界転生の「あるある」を作品内競技に世界観と融和させた形で持ち込める、驚くべき設定といえる。

超世界転生エグゾドライブ書籍とコミカライズ単行本発売おめでとう!

「超世界転生エグゾドライブ -激闘!異世界全日本大会編ー」という作品があります。

小説家になろうなどのネット小説をはじめとしてもはや汎用的ジャンルとなった「異世界転生」を題材としたホビーアニメ調作品であり、それぞれについて少しでも知識があるほど楽しい作品と言えます。

時は2018年、カクヨムに鬼才の作者である珪素氏から投稿されたこの作品が何とこの秋書籍版と漫画版単行本第1巻が発売されました。本当におめでとうございます。

中身についてのあれこれは今回置いておいて、作品についての案内をします。

 

まずこの作品について知らない人はこちらで月一連載中の漫画版を見てみてほしい。なにも複雑なことも考えず、主人公が轢殺トラックに轢かれるところまで読んで欲しい。きっとこの作品がどんなものか何となくわかっていただけると思うしこの作品の持つ魅力、というか意味不明さなどもわかっていただけると思っています。

1~2話は常時無料公開されており視覚的に描写されたこの作品をいつでも味わうことができ、また最新話も同様に公開されています。2020年9月20日現在は3~4話が公開終了しているものの、1~5話を全て納めた単行本が9月14日に発売されたところになります。気になった人はそちらも買ってみてね。小説にはない視覚的理不尽があなたを襲う。

 

上述の通り、原作はカクヨムに投稿され完結済み。漫画版お先が知りたい人はこちらから素敵な作品の全貌を読んでいただき脳を揺さぶられてほしいと思います。

小説家になろうにも同一の内容が投稿されているので読みやすいほうを選んでね。リンクはこちら

そしてそれらの前半の書籍版も9月17日に発売。基本的には上記の原作通りとのことだが、部分的に加筆修正、掌編もつけられて世界観とキャラを補完する内容になっている。まず上記の作品を読んで、好きになった人にはぜひ買うのがいいんじゃないかなとか。

 

ネット小説をはじめとした異世界転生もの、「遊戯王」シリーズなどのホビーアニメに触れたことのある人には本当にお勧めできる作品なので、触れやすいものを呼んで欲しいという気持ちでいっぱいです。